渡辺多恵子「ファミリー」(小学館/別コミ/1983年)

 昨日思い出したんですけど。私「ファミリー」が大好きだった。主人公フィーとその彼女の欺瞞性を暴くジャニスの話。すっかり忘れてたんですけど、思い出しました。
私自身は10代の頃正義感の強いモロに主人公フィーとシンクロするような性格でした。しかし、20代で自分の中の「正義」にいらだちを感じ分裂していった所がありこの二人の登場人物が自分の性格をまるでコインの表裏の様に表しているなあ・・・と思いました。今でもたまに「正義」が看板になって人を傷つけてしまったりしていますが、「人ってもっと複雑だし、間違えるものだし、正直になれない人生って自分も相手も息苦しい」って事に気づくまでにずいぶんと時間を費やしたものです。
 あ、後、中学生だった私は当時アメリカっていう国にとても期待があった。リベラルで常に世界をリードして行ってくれる国。間違った事にもの申してくれる国、先進的で前向きなイメージがあったんですね。正に主人公フィーがそれを象徴していたような気がします。当時オリバー・ストーンが「プラトーン」(1986年)を制作したりして、「ああ、アメリカ人って本当に正義の人たちなんだあ」と思い込んでたんですね。でもこの後、数年後に湾岸戦争などが始まって以降はその幻想は打ち破られてしまうわけですが。
 だからといって今の私がそういった「アメリカに憧れてた少女」を笑えるかというとそうでもなくて、極東の一少女にそう思わせる力がまだアメリカにもあったんだなあ・・・と(まわりくどい言い方だが)そう思ってしまいました。
 なんやかんやで、ちょっとほろ苦い部分も含んだこの作品が私にとってとても意味の深い漫画だった事は間違いないようです。 

http://blog.so-net.ne.jp/sakura-memo/2007-06-28
http://woman.nikkei.co.jp/culture/lecture/lecture.aspx?id=20050101sb302sb

ぱふ 107 昭和60年11月 特集・「ファミリー!」フォーエバー. 渡辺多恵子インタビュー