es

 有名な心理テストを実写化した作品。実際に行われたのは米国だが製作されたのはドイツ。
 1971年、スタンフォード大学心理学部で、新聞広告によって集められた一般市民を「看守役」と「囚人役」に分け、監視カメラ付きの模擬刑務所に収容して実験が行われた。二週間、いくつかのルールに従いながら役を演じることが課されたが、看守役の暴走により(禁止されていた暴力が発生)2週間の予定が6日で中止。被験者の家族が弁護士と一緒に中止を求めた事が理由。その後訴訟などの問題になったらしい。この実験を主催した教授は後に「その場のリアリティーに飲まれて正確な判断力を失った」と告白している。現在、この実験は禁止されている…。
 先日、「ホテルルワンダ」を見た時、やっぱりこの「es」という映画をきちんとみないとダメだなと思ってしまい、とうとう見ました。今までも様々な戦時の暴力の証言は仕事やいろんな活動を通して接してきたけれど、どうしても最後まで分からないのが「なぜ善良な市民のはずの人が戦時下では暴走するのか」だった。実際私があった日本の老人はこの上なく善良で、自分が戦時にした戦争犯罪を悔いて正に懺悔しながら生きているが、戦時の暴力を聞くと背筋が凍った程だった。その二面性が信じられなかった。目の前でその人物を見ても「まさかのこの人が」と信じられなかった。その疑問に何かしらの示唆を与えてくれたのがこの映画だった。
 人間がいかに設定された状況で人格に関係なくコントロールされるかがわかる。例えば実験が始まってから被験者は面会の機会が与えられているが実際に中で起こっている人権侵害に関して家族に告白した者はいなかった。看守に脅されていたにしても、すでに判断力さえコントロールできなくなっていたんではないだろうか?
 これはあくまで実験だけれど、危険地帯の戦争の最前線で実際に命がかかっている状況でもしもこのような役割(兵士と民間人など)が与えられたらはたして自分は正気でいられるか?むしろ正気を保つ為に役割に順じて生き延びるんではないだろうか?
 つくづく人間が一番怖い。

 スタンフォード監獄実験について
 http://x51.org/x/06/04/2439.php
 http://www.prisonexp.org/
 「es」
 http://www.gaga.ne.jp/es/