「それでもボクはやってない」

今日は銀座シネパトスで「それでもボクはやってない」を見ました。痴漢冤罪の映画です。「シャルウイダンス」の周防監督の十年ぶりの新作です。口コミでロングランらしく、今日も15分前から並んで座りました。
 見始めて思ったのは「いい線いってる」って感想でした。映画やドラマはとにかく演出がうるさすぎてせっかくの脚本や役者を潰してしまう事があるけれど、無駄な表情、動き、リアクションをどんどん削っていって限りなく日常に近づけた・・・という部分で最初のハードルはクリアでした。・・・で最後まで見て「ああ、これは緻密に取材をしたほとんどドキュメンタリーなんだな」という事がわかりました。「もしも貴方が(痴漢に限らず)逮捕されたらこうなるんですよ」っていう日常と非日常との境界線の狭間を疑似体験させてくれる希有な映画でした。どうしても刑事が出てきたり、法廷が出てきたりすると「ああ、これは映画だから」「まあ、こういう事件は生活とは関係ないから」って思うんだけど、この映画はそういったボーダーラインが在るように見えて実は無い・・・という事を教えてくれる。

 ところで「痴漢」というテーマとなると黙ってられない人は多いと思う。かくいう私も過去何度も痴漢に遭ったことがある(ハッキリ言って美人でなくてもあいます)し、ある時は何も言えず黙り込み、ある時は相手の手まで掴み「やめてもらえませんか?」とやっとの思いで声を出し、ある時は隣で痴漢されてる女の子に声をかけて駅長室まで痴漢を連れて行ったこともある。そしてやっかいなのはそういう体験があった事を周りの人に話した時の反応でした。「冤罪だったらどうするの?」ってまず言われるんですよ。そう言われた時のなんともいえない「悔しさ」ってあります。「なんで私がこんな言葉を受けないといけないわけ?」とキレた事もたくさんある。喧嘩だって沢山してる。だからこそこの映画で被害にあった女子中学生が勇気を出して訴え出た事には痛いほど共感する。「冤罪の事になんて頭がまわらないよ!」っていうのが本音だった。だから数年前だったらストーリーを聞いただけで怒って見なかったかもしれない。
 でも今日この映画を見れて本当によかったとおもう。冤罪事件だって痴漢被害と同等にきちんと向き合うべきテーマなんだと。男性も女性もヒステリックにならずに落ち着いて、まず、このテーマを考える機会になれば、周防監督も監督冥利につきるんじゃないかな?

 おまけ1
 これからご覧になる方。段々上映館が減ってきてます、できればお急ぎ映画館へ走って下さい。パンフレットは600円ですが内容は監督の本気度が伺える見事な監修付き。値段以上の価値がありますよ!

 おまけ2
 周防監督のデジカメ日記がおもしろいyo!http://soreboku.cocolog-nifty.com/ 監督ってば〜「僕の妻が・・・」とか日記に書いてるし!妻って前作のヒロインさんでしょ?妻だって妻!
 360度回転しながら証言席に立った主人公をとらえたカメラの構造が明らかになっている。実はこの撮影方法がめっさ気になってた。特注の機材らしいよ!

 おまけ3
 映画の宣伝マンの裁判傍聴日記もおもしろいyo!http://blog.soreboku.jp/