elephant/2003年/アメリカ

　ガス・ヴァン・サント監督作品。有名なコロンバイン高校での銃の乱射事件をモチーフにした作品でした。同じ時間軸の中で色んな生徒達が事件当日にどんな風に動いていたのか、ステディーカメラが人物を前方から押さえつつ密着して記録していく。日常の中の意味の無い会話などが妙にリアルである。「こいつらみんな死んじまえばいいのに」と思ってしまう程の退屈な日常をこれでもかというほどしつこく表現している。犯人の二人の若者の背景もほとんど描かれていない。
　テーマの押しつけも、説教も、「現代社会の心の闇」などといういかにも「わかった風な解釈」も一切入り込む余地を許さない。そういう映画だった。見た後に、悪いけど「美しい映画だな」と思ってしまった。これは記録映画ではなくて、あくまでも独自の世界観に基づいた作品なんだと思った。

　撮影・録音技術について・・・。カメラは至近距離からステディーでなめる様に長距離をノーカット撮影している。廊下から教室、教室からさらに部室など、普通ならカット割りするであろう箇所で全く区切っていない。しかも人間が日常的にする行為（自分が興味のある方向へ視線をずらし、自在に焦点を前後させ、聞きたい会話にフォーカスし、いらない音を切り捨てる・・・という生理現象を観客が見るスクリーンで再現している。この方法は自分としては「桜の園」という日本映画で見ているが、作品の中でその技術に必然性があるのかどうかが重要で、後者では完全にそのシーンが上滑りしていたと記憶している。