三池 

(ネタばれ有ります)  
 今日は一人でポレポレ東中野で映画「三池」を見ました。友達のお爺ちゃんが出演していると聞いたので、見たくて〜、いやースゴクよかった!!!女性サービスデーでハリウッド映画をみようかとも思ったけど、本当に1600円払ってもぜんぜんイイ!と思いました。
 当時20歳前後で労働していた方々はまだ6〜70代くらいの方も多く、たくさんの証言がフィルムに残っています。(てっきり私はもう労働者の方々は亡くなっている年齢だと勘違いしていたので)危険と隣り合わせの炭坑での労働。その労働が今の豊かな日本の成長期にとても貢献していたのですが、今、炭鉱労働者を知る人は少なく、そもそもエネルギーとしての炭が有ることさえ知らない子どもも多いと思うんですが、残された炭坑の奥深くからたちのぼる存在感と元労働者の方々に刻まれた皺や切ない表情から当時の生き生きとした現場を想像することができます。
 
 三池炭坑には「負の遺産」としての意味もあり、囚人労働や中国人、朝鮮人の方々を騙して強制連行したという歴史もあり、監督自身も映画を撮ろうか悩まれたようです。後、安保闘争とも共鳴して組合活動が活発化し、経営側の組合への工作による分裂が起こり、労働者同士の間に軋轢を産んだりもしたらしい。特に労働者側の指導者の暗殺などもあったりして、ちょっとすごい様相を呈していたらしい。もうほとんど戦争状態と言っていい激しい映像が残っている。しかし、主婦の組合員の強さたるや凄かったようだ。実際デモや座り込みにも参加したり、1万人規模の集会(女だけのジグザグデモ・・・すごい・・・)なども持っていた。後、やっぱり家計を支えるのは母ちゃんだから、その母ちゃんの意見で旦那が組合の種類を決めたり、労使交渉などで元気づけられたりしていたようで、「肝っ玉母ちゃん」とはこういう事をいうんだろうなあと思った。(初期は女性も炭坑で労働をしていたという事も起因しているかもしれない。)
 どちらにしても、危険故に被差別民や貧困層が導入されていた・・・という意味でナショナリティーっていうよりもやはり「ある階層」の人たちの連帯の様なモノを感じる。

 実はこの炭坑では戦後最大の炭坑事故が起こっていて、458名が死んでいる。炭坑の中で被害にあい、生還した方の中にも一酸化炭素中毒患者(子どものようになったり、人格が変わってしまったりもするらしい、脳がやられるのだ)による被害を受けていて、その家族は何十年にも渡ってその事故の影を引きずっている。そういう事はあまりにもメディアには露出してこなかった正に負の遺産かもしれない。
 これらの事は私たちが知らないのが恥ずかしい部分でもあるけど、「知らせれてこなかった」部分でも有ると思う。戦後の高度成長の中で綺麗な部分、楽しい部分は拡大されるけれど、こういった末端の部分は隠蔽されてきたのかもしれない。そういう意味で水俣の事例とも似ている。

 こ難しい説明をいろいろしたけれど、この映画の本当の魅力はやはりその炭坑労働という、言ってみれば社会の中での「汚れ役」(あくまでカッコ付きね)をやっていた人たちだけど、彼らのその労働に対するプライドとか愛着・・・そういうものにあったと思う。その証拠に点滴を打ちながら、塵肺の病気で死にそうな老人が息切れしながらインタビューに必死に答えている。「知って欲しい。自分たちがいた事を知って欲しい」ただ、それだけの事だけど、とても大事な事だったんだと思う。

 映画館を出た後、スーツを着たサラリーマンや若者の姿が目に入ってきた。いきなり数十年前の炭坑の街からタイムスリップして東京の現代に戻ってきた・・・という感じ。「できるだけ沢山の日本の人にこういう炭坑があった事を忘れないでいてほしいなあ」と心から思いました。炭坑で働いていた人たちの想いや、ひたむきな真摯さや、そういうものが現代の人たちにも見えない形ではあっても受け継がれているといいなあ、血となり、肉となり、受け継がれていって欲しい。
 そして炭坑で亡くなった多くの方々へ合掌。

「三池」公式HP  http://www.cine.co.jp/miike/