孤独な少年

rena11252007-05-06

 今日は昼自分の作品の為に録音作業をした。最近いろんなイメージが頭のなかに浮かんでくる。 

 ところでところで。ヘンリー・ダーガーという人がかつてアメリカにいたのですが、今日初めて「美術手帳」で彼の事を知りました。彼の描いた画は本物で、私は釘付けになった。彼は4歳で母親を亡くし、父親も思春期に亡くした。妹は生まれてすぐに里子に出され顔も知らない。知的障害があると誤診されて児童擁護施設に収容されるが、そこで酷い虐待を受ける。17歳で施設を脱走して以後40年間医療施設の皿洗いとして最低賃金で働き、一生を終えるまで友人はたった一人、生涯独身(異性との交際も皆無)ひたすら引きこもりを続けた男性だった。15000ページにも登るおびただしいテキストと画をかき続け誰にもその内容は知られないままにこの世を去った。死後、隣に住む大家(アーティストであった)に発見され世に知られる事となり、世界的にも有名なアウトサイダーアーティストと言われるまでになった。
 彼が日本では特に若者を中心に圧倒的な支持をされている事がとても気になった。彼の画にはおびただしい数の少女達が登場し、男・大人達(権力者)と闘い続ける。その内容は日本の「普通の家族」で育ったはずの子ども達がトラウマを抱えつつ大人になり、ひきこもり、自分の中に幻想の少女を育て、それを愛する構図とどこか重なって見える。フェミニストからみれば、そういったサブカル表現にみる少女愛好は幼女虐待の下地でしかないかもしれないが、ダーガーの作品の圧倒的な質の高さの前にはそういった重大事項もかすれて見えてしまう。それほど彼の作品にはネガティブを内包した魅力(虐待された子どもの孤独、怒り、そして癒し、祈りの様なもの)を感じてしまう。
 素人であれ、屈折した性的指向があったのであれ、私たちを魅了するのは彼が今の世相をあまりにも的確に予見していたからなのかもしれない。
 彼は早すぎた天才だったのかなあ・・・。そして生きている間は愛されなかったのに、死んでから世界中の人に愛されたちょっと悲しい人なのかなあ・・・と。